平歯車(スパーギヤ)は、歯筋がまっすぐで軸に対して平行になったシンプルな形状の歯車です。基本的な歯車であり、乗馬靴の踵についている拍車(spur)のような形状から、スパーギヤ(Spur Gear)とも呼ばれます。回転軸と平行に歯がついているため、軸に対して斜め方向の力(スラスト)がかからないことが、平歯車の大きな特徴です。
平歯車は、平行軸の一方から他方へ回転を伝えるために用いられます。ラックを使って回転運動を直線運動に変換する場合もありますが、いずれのケースでも、主な目的は動力の伝達です。形状がシンプルで製造が容易なことに加え、複雑な軸受を必要としないため、大型機械からおもちゃに至るまで、さまざまな機器で使用されています。
平歯車の長所は、生産性と省スペース性の高さです。
シンプルな形状の歯車である平歯車は、他の歯車より製造が容易で、精度を高めやすいといった特徴があります。生産性に優れるというのは、平歯車の大きな利点です。
また、省スペース性にも優れています。その理由はふたつ。第一に、ある程度の厚みがなければ性能が発揮できないはすば歯車と比べて、平歯車は薄く仕上げることができます。第二に、平歯車はスラストが発生しないので、複雑な軸受を使う必要がありません。これらの理由から、平歯車は限られたスペースでも使いやすいのです。
平歯車は、はすば歯車に比べて振動や騒音が大きくなりやすいという短所があります。
というのも、歯車は同時に噛み合う歯が多い方が、振動・騒音が小さくなります。同時に複数枚の歯が噛み合っていれば荷重の移行が滑らかになり、軸から軸への回転伝達にムラが生じにくいからです。平歯車の場合、同時に噛み合うのは1〜2枚に限られるため、1歯ごとの噛み合いの変動が大きくなります。
平歯車は、はすば歯車などと比較すると振動が大きく、静粛性において不利になります。
自動車、産業用機械、農業機器、時計、おもちゃ等
種類ごとの長所・短所などを、それぞれの解説ページで解説しています。下のリンクからご覧ください。
歯の一部分が欠けている歯車です。この特徴により、等速回転運動を間欠運動へ変換することができます。ただし、始動と停止を繰り返すため、高速回転を伴う機構にはあまり向いていないと考えられています。また、歯車の噛み合いがずれやすいとされています。
従動歯車の回転を決まったタイミングで繰り返し停止させる歯車です。複雑な伝達を行える点が魅力といえるでしょう。ただし、始動と停止が急激に行われるため歯に強い衝撃が加わります。また、歯車の摩耗や摩擦も起こりやすいと考えられています。
引用元:菊地歯車公式サイト
(https://www.kikuchigear.co.jp/products/)
菊地歯車の例
自動車エンジンのタイミングギヤには、省スペース性に優れた平歯車が使用されます。また農機具では、さまざまな部位に平歯車が用いられています。
画像は、歯研によって高精度に仕上げられた平歯車(スパーギヤ)によるタイミングギヤ。
引用元:日下歯車製作所公式サイト
(http://kusaka-gear.co.jp/service/products/)
日下歯車製作所の例
二輪車のトランスミッション、ロボットをはじめとする産業用機械に使用される平歯車です。
引用元:協和製作所公式サイト
(https://www.kyowa-mfg.co.jp/parts/g6/)
協和製作所の例
自動車や自動二輪、農業機械用のミッションに使用される平歯車。画像は、外径:φ97.9、内径:φ67.1、M3.0 、JIS4級の製品です。
引用元:坂西精機公式サイト
(https://www.sakanishi.co.jp/products/products_1.html)
坂西精機の例
高周波焼入によって強度を高めた精密歯車(M1.5)。クラウニング処理によって振動を低減しています。
引用元:坂西精機 公式サイト(https://www.sakanishi.co.jp/products/products_1.html)引用元:町田ギヤー製作所公式サイト
(https://www.machida-gear.co.jp/products/877/)
町田ギヤー製作所の例
産業用設備に用いられる薄肉平歯車です。
画像のものは、モジュール1.5 外径Φ332、歯数188枚、肉厚1.5mm。独自の加工方法によって高精度を実現しています。
精度やサイズなど5つの特徴的なポイントにマッチするギヤメーカーを紹介しています。
【選定の条件】Googleにて「ギヤ メーカー」「歯車 メーカー」で検索し、100位までに公式サイトが表示されたメーカーの中から
①ギヤ加工の対応範囲が広い(一部の種類に特化していない)、②国際的な品質マネジメント規格ISO9001を取得している、または、「日本歯車工業会」所属のメーカーから、各条件に適したメーカーから紹介しています。
(Google検索は2022年7月1日時点、①②は2022年7月調査時点)
※以下の根拠をもとに選出しています。
【高精度】…機械加工技能士「特級」保有者の数が最多、高性能な設備(ハイエンド/上位機種)の導入 【既存歯車の再現】…複製技術に強み、複製がプラン化されている
【標準歯車】…標準歯車の取扱い製品数が最多
【特大サイズ】…公表されている加工設備の対応サイズの中で最大 【極小サイズ】…商品化されている製品の中でモジュールが最小