クラウニングギヤは、負荷分散や騒音低減、軸ずれへの適応性などの多くの利点を持つ一方で、製造コストの高さや高負荷環境での限界など、考慮すべきデメリットも存在します。本記事ではクラウニングギヤの特徴や短所・長所などを紹介します。
クラウニングギヤとは
クラウニングギヤとは、歯車の歯面がわずかに曲面状に加工されたギヤを指します。歯車同士が噛み合った際に生じる負荷の分布を改善し、摩耗を減らすために行われる加工です。通常、歯の中央が高く、端が低くなるような形状（曲面）になっています。
クラウニングギヤの長所と短所
長所
- 負荷分散の改善が可能
- 軸ずれや取り付けの誤差に対して適応性がある
- 騒音と振動が少ない
- 歯車の寿命が延びる
クラウニングにより、歯車のかみ合い時の負荷は歯の中央部分に集中します。その結果、端部にかかるストレスが大幅に軽減され、全体的な負荷の分散により摩耗を抑えられます。
また、軸の微小なずれや設置時の誤差にも柔軟に対応できる点が特徴です。設置や組み立て時に少々のミスがあっても、正常に動作しやすいため、高速回転するシステムや動力伝達が重視される場面でもクラウニングギヤは適しています。
さらに、歯のかみ合いがスムーズに行われることで、振動や騒音が大幅に軽減され、作業環境が静かで快適になります。
クラウニングによって歯車の負荷が均等に分散されるため、摩耗が遅くなり、結果として歯車の寿命が長くなります。長期的な使用を前提とする機械に適しています。
短所
- 高負荷な環境には耐えられない可能性がある
- 再研磨するのが難しい
- 誤差によって効果が低減する
クラウニングギヤにも、デメリットがあります。まずは使用環境です。特定の負荷条件・環境では適した効果を発揮するものの、極端に負荷が高い場所や過酷な環境での使用にはあまり向いていません。歯の形状がうまく機能しない場合があります。
さらに、再研磨が難しい点も短所です。特殊な曲面を持っているため、摩耗や損傷が発生した場合の再研磨は難しいでしょう。修理やメンテナンスは、他の歯車と比べると複雑です。
そして最後に、誤差によって効果が低減する点も短所です。精度の高い加工が必要なので、製造過程で誤差が生じてしまうとクラウニングギヤとしての性能・効果が落ちてしまいます。
クラウニングギヤの主な用途（対応している分野）
クラウニングギヤは、以下の分野に対応しています。
- 自動車産業：自動車のトランスミッションやデファレンシャルギヤなどに使用されています。特に快適性を求める高級車・電気自動車でクライニングギヤを必要としているでしょう。
- 航空宇宙産業：航空機のエンジンやギヤボックスにも使用されます。精度の高さが求められるため、効率の良い動力伝達に役立ちます。
- 重工業および産業機械：工場で使用されている大型機械・産業用ロボットなどにも、クラウニングギヤが採用されています。負担を分散して機械寿命を延ばすために、クラウニングが有効です。
- 風力発電：風力発電設備のタービンギヤに効率的に動力を伝えることが求められています。クラウニングギヤなら、軸の微妙なずれや振動を吸収しながら、高い電力伝達をかなえます。
- 鉄道：鉄道の駆動装置やギヤシステムで用いられています。耐久性と騒音対策によりスムーズな走りをサポートします。
- 医療機器：MRIや手術用ロボットなどに使用されています。
上記のように、さまざまな分野で活躍します。特に高回転・負荷の変動がある分野や騒音・振動が問題となるシステムなどにおいては、優れた性能が発揮されるでしょう。
クラウニングギヤの製品例
引用元：オービー工業株式会社公式サイト
（https://www.ob-kogyo.co.jp/injection/high/）
オービー工業の例
原料がPOMでモジュールはM2.0のクラウニングギヤです。かみ合い効率を高めることを目的として、歯すじの中央に向けてふくらみを設けてあります。静穏性や低振動性に優れているのが特徴です。