歯車メーカーを選ぶにあたって、メーカーの対応力をはかるための視点をご紹介します。工業製品には大小さまざまなギヤが使用されており、それらを製造するメーカーもまたさまざまです。その中から自社の目的に適合するメーカーを選定するには、メーカーの対応力を確認しながら、候補を絞り込んでいく作業が必要になります。
どのような視点でメーカーの対応力をはかるのか、具体的なポイントとチェック方法をご紹介します。
メーカーの選定においてまず確認したいのは、自社の目的に対応した製造が行えるかどうか、という点です。自社の目的が開発試作なのか、量産なのか、それとも損耗したギヤのレストアなのかによって、メーカーに求められる対応力も違ってきます。
ひとことにギヤメーカーといっても、特注品の試作・小ロット生産を得意とするメーカーもあれば、量産に特化しているメーカーもあります。小ロット生産に対応しているメーカーが、そのまま量産に移行できるとは限りません。また、損耗したギヤの再現が必要なケースでは、生産能力以前に、材質と形状の詳細な解析といった技術が求められるでしょう。その際、メーカーによっては、既存のパーツを再現するに留まらず、より性能の高い代替品の提案を行えるかもしれません。
メーカーの対応力をはかるには、試作、小ロット生産や量産が可能かどうかという生産能力を確認しましょう。既存ギヤの代替品が必要ならば、損耗した部品の解析と再現が可能かを確認します。加工機や測定器といった保有設備と規模、これまでの製造実績を調べて、自社の目的に合致しているかどうかを確認するといいでしょう。
メーカーの対応力を見るときには、専門性に注意を払う必要があります。対応可能な業種は、最初に確認するべきポイントのひとつです。
ギヤはさまざまな工業製品で使用されていますが、業種によって使用されるギヤのサイズ感や性能は違っており、材質や精度の基準も異なります。建設機械向けの大型ギヤを手掛けているメーカーと、精密機械向けのギヤを製作するメーカーでは、設備規模が異なります。同じウォームギヤであっても、ウクレレのペグに使われているものと業務用エレベータに使用されているものでは、サイズも強度も全くの別物でしょう。
メーカーを選定する際には、自社の用途に対応できるかをしっかり確認します。メーカーの公式HPで主要取引先を確認し、業種と実績を確認するといいでしょう。本サイトでも、「業界・分野別 実績あるギヤ(歯車)メーカー一覧」で詳しくご紹介しています。
対応する業種を確認できたら、メーカーの公式HPの製品ページなどで、製造可能なギヤの種別を調べます。
ギヤメーカーには、それぞれ得意とする歯車のタイプ、加工方法があります。平行軸歯車全般の量産が得意なメーカーもあれば、ベベルギヤに特化したメーカーもあります。ホブ加工に長けたメーカーもあれば、ギアスカイビングを得意とするメーカーもあります。なかには、保有設備の関係で内歯の加工はできない、というメーカーもあります。
メーカーの対応力をはかる基準のひとつに、製造可能ギヤの種別があります。自社が必要とするギヤを製造可能かどうか、各メーカー公式HPの製品ページ(実績紹介)で確認しましょう。
製造可能なギヤの種別と併せて、対応可能スペックの確認も重要です。
製品情報のページに、対応可能サイズやモジュール、軸径、歯形、圧力角などの情報が記載されている場合は、それらをチェックすることで自社の目的に適合しているかどうかが判断できます。
また、製造可能なギヤのサイズは、加工設備によって決まります。保有設備の種別と規模をメーカーHPで確認しましょう。保有設備を活かせる技術力の有無については、製造(納入)実績や、次項でご説明する認証取得の有無などを確認することをおすすめします。
製造可能なギヤのスペックを、メーカーHPなどで確認しましょう。スペックが記載されていない場合は、保有設備をチェックすることである程度の判断ができます。
メーカーの対応力を判断する基準には、加工精度も挙げられます。ギアの精度は、騒音・振動に直結します。不必要な干渉は故障の原因になったり、動力の損失を招いたりといった問題の原因になるため、高精度な加工を行えるメーカーを選びたいものです。
加工精度の高さを判断する目安のひとつに、JIS Q9100があります。JIS Q9100は、ISO9001をベースとして、航空宇宙・防衛産業に特有の要求事項を追加したもの。航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格で、米国AS 9100や欧州EN9100と同等です。
JIS Q9100の認証を取得しているメーカーは、航空宇宙・防衛産業の厳しい品質基準をクリアしているため、精度の高さは折り紙付きです。また、コンプライアンスやリスクマネジメントという面でも信頼性が高いことは、いうまでもありません。
メーカーの対応力をはかるには、精度も重要な要素です。メーカーの加工精度に関する信頼性を知りたい場合は、公式HPの会社概要や沿革から、取得認証についてチェックしてみましょう。JIS Q9100の取得は、大きな安心材料となります。
精度やサイズなど5つの特徴的なポイントにマッチするギヤメーカーを紹介しています。
【選定の条件】Googleにて「ギヤ メーカー」「歯車 メーカー」で検索し、100位までに公式サイトが表示されたメーカーの中から
①ギヤ加工の対応範囲が広い(一部の種類に特化していない)、②国際的な品質マネジメント規格ISO9001を取得している、または、「日本歯車工業会」所属のメーカーから、各条件に適したメーカーから紹介しています。
(Google検索は2022年7月1日時点、①②は2022年7月調査時点)
※以下の根拠をもとに選出しています。
【高精度】…機械加工技能士「特級」保有者の数が最多、高性能な設備(ハイエンド/上位機種)の導入 【既存歯車の再現】…複製技術に強み、複製がプラン化されている
【標準歯車】…標準歯車の取扱い製品数が最多
【特大サイズ】…公表されている加工設備の対応サイズの中で最大 【極小サイズ】…商品化されている製品の中でモジュールが最小